島田 清次郎 32006/02/12 00:00

「私は置き忘れて来た」

銀座の裏に赤い花を置き忘れて来た

緑のトランクはわたしの歓びを入れたまゝ

ステェションに置いてある。

誰れにも告げないで夜空に放つた赤い風船は

今何処に流れてゐるだろうか

(あれが一番私を知つてゐたのに)

精神病院の鉄格子の窓から

私は片方の黒い靴下を棄てた

乳を出した狂女が向ひの窓でそれを見ていたが、

乳をもいでわたしに投げつけた。

どこかに置き忘れてゐた哄ひがくつくつと

この時、舞ひ上つた鳩を追ひかけていつた。

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