いい年してバラヤー2010/01/13 00:00

ロイス・マクマスター・ビジョルドって面白い。
今頃知ったため、いい年して再びSF文庫本を買いだした。

一番最初に読んだSFは中学生のときのレンズマンだが
最期に読んだSFは何だったか。
10年?20年? SFから離れていた。

EEスミスのレンズマンや、アシモフのファウンデーション、ハーバートのデューン、 ムアコックのルーンの杖、 ブラッドベリやPKディック、ル=グイン、、スペースオペラから思索系まで、子供が生まれるくらいまでは夢中で読んでいた。

ニューロマンサーに大衝撃を受けて、エンダーのゲームにぞっとして、、そのあたりから次第にSFを離れてしまった。

当時の子供が今は結婚するというぐらいの歳月が過ぎ、

Robin McKinley のファンタジーを読んだ事がきっかけで ビジョルドを知り、戦士志願を読んだら、これが、とんでもなく面白い。
優れた作家は想像力で色々な世界を作る事ができる、というお手本のようだ。

ヴォルしか刀剣をもてないとはまるで日本の武士階級のようではないか、鎖国時代のせいでインフラは遅れている惑星、60あまりの領地にいるCountは苗字にヴォルをつけている(プロイセンのユンカーのようだ)特権階級。 国家形態は江戸幕府&明治政府に似ている。Countは藩主だが、そもそもは平安時代の国司ともいえる。 エンペラーを頂上に戴き、一般的な宗教はなく(一神教も多神教もなさそうだ)、男子は勇猛、女性はしとやか、という男尊女卑社会。 契約よりも言葉による「誓い」のほうが重きを成す。
開国(開星)による先端技術の吸収は軍事産業に傾きがち、世襲のヴォルの国主会議と、一般民の議会があるが、皇帝の一声でなんとでもなる。暗殺や粛清も日常茶飯事?!

対照的に、先端科学に支えられた高度情報社会のベータ星。
自然条件が非常に悪いため主に人工的建造物のなかで暮らす人々。
12歳になると全員が永久避妊具を埋め、遺伝子審査や養育能力などをパスしたカップルのみが妊娠を許可される。 妊娠すると女性側の選択で人工子宮も選べ、その場合は9ヶ月後に赤ん坊にご対面というわけだ。
合成たんぱく質の食事、あらゆるところに装備された監視カメラ、あらゆることに契約や法律がつきまとう、カリカチュアされているが、現代の先進諸国の延長上にある星。

都会育ちの理系キャリアウーマン(大柄)がタイムスリップで明治時代かプロシアの軍人貴族と恋におちたような話だが、どうしてこんなトコに来ちゃったの!やばすぎるじゃない! 安心して眠ることもできないほど妬みそねみ憎しみ権謀術策のうずまく世界。

スーパーウーマンらしくないスーパーウーマン。
知力と胆力と誠実さをふりしぼって、過酷な道を行軍する。
剛毅なダンナがメロメロだから気持ちいい。
ジェンダー問題を嫌味なくエンターテイメントにしている。