Patricia Oliver の感想2010/04/14 23:51

ジョージエット・ヘイヤーのように、当時を再現したようなオーソドックスな会話、現代的なセリフを言う者などいない、という古風な作りなのに、

驚くほどショッキングなシチュエーションだったり、
信じられないほど浅はかなヒーローだったり、、なんというか、、普通じゃない!!

Roses for Harriet では、田舎暮らしが嫌いで、ロンドンに非常に美人で気立てのよい愛人(4年という長い付き合い)を囲っている侯爵だか伯爵だかヒーローが登場する。
自分のことを放っておいてくれる分別ある妻を求めて、不美人なハリエットにプロポーズする。

ハリエットは、ロンドンなど大嫌い、田舎でバラを育てるのが大好き、もう25歳だが、結婚を焦っているわけではなかった、とはいえ、子供を持ちたいと密かに思っていた。
ヒーローのプロポーズは非常に失礼なものだったが、これ以上良い条件の結婚はないかもしれないと、承諾してしまう。

ヒーローは新婚早々、愛人が病気だと言うのでロンドンに行ってしまう。

ヒロインは本当に分別よく、ヒーローの領地でバラを育てる、、内心は傷ついた事をみせないようにして、、

ここからが、この作品のショッキングな事だが、なんと、夫の愛人は、ヒロインの子供~娘時代の親友だったのだ。 美人で心優しい女性で、夫を戦争で亡くし、ヒーローの世話になってきたのだ。。

嫌やわ~。。なんて、、気まずいシチュエーション!

ところが、この話は、軽いコメディ調になる。
ヒロインは、かつての親友が問題の愛人だと偶然知ってしまい、夫に向かって「こんな素晴らしい彼女になんて事をするの!」と怒り、夫の愛人のほうを「空気の悪いロンドンより領地で静養して」と連れて帰ってしまう。

ヒーローの領地の館に 妻と愛人が仲良く暮らすという事態に、ヒーローは計算通りの結婚をしたはずなのに、一体何がどうなってしまったんだ、とうろたえる。

ま、ヒーローは沢山反省したり自分を見つめなおすことになるんだけれど、、読んでいると、ヒーローと同じように居心地が悪くなる。

領地にヒーローがやってこない理由は、自分がいるからだ、と、親友を慰めたり、、分別ある行動をしようとするヒロインの切なさを作者は笑いで包もうとするんだが、なんていうか、居心地が悪い。

最後の部分はとても上手い。
ヒーローの腹違いの弟がヒーローの愚かさを怒るときのセリフは秀逸。ヒーローが猛反省して、ハリエットのもとへ向かった後の二人のやりとりも心温まる。

でも、手放しで喜べない、微妙な話だった。

もうひとつのImmodest Proposal はもっともっとひどい話だった!

最悪ヒーロー! ハーレクインの最悪Rでもこれほどひどいのはいないんじゃないかなあ。
年下ヒーローなんだが、ヒロインのおなかの子が他の男性の子供だという噂を信じて、否定するヒロインを信じようとせず、家をでて娼婦と騒いでしまう男だ。
ヒロインを責めておいて、自分は娼婦と寝るのかよーっ。
ダブルスタンダードやわ。
しかも、ヒロインは責められるような行動をとっていないのに、勝手な思い込みで、、しかも、貧乏ヒーローで、ヒロインの財産をつかって女遊びなんだからねぇ・・・

パトリシア・オリヴァー、恐るべし。

バラヤー内乱の誤訳2010/01/15 00:00

小木曽さんの翻訳は、その小さな部分だけ読めば意味が通っても、全体の文脈から考えると、オカシイ、と思うものがちょこちょこある。

とくに内面の吐露や感情のぶつかり、など、文学的な部分が怪しい。

父 ピョートル --次男アラール --アラールの息子マイルズ

という関係で、ピョートルは過去に優等生の長男を失っていて、自分の思い通りにならない次男アラールに内心失望や不満を抱いているという背景がある。

1) ピョートルは奇形の胎児マイルズを殺そうとして失敗し、アラールへの説得も失敗し、たとえ生まれてもマイルズを認めないと言った。
2) 反乱軍に人工子宮(マイルズが入っている)が奪われたが、アラールの妻が決死の思いで取返した。
3) マイルズは無事誕生したが、予想どおりの奇形であり、ピョートルはそれを嫌悪し、再びアラールを罵倒した。「おまえの兄が生きていれば・・」

ーーココカラ引用

「兄上が生きていたら、さぞかし完璧だったことでしょうね。・・略・・ あの血にまみれた晩餐会以来、ユーリ狂人皇帝の死の小隊の目を逃れて生き残ったこの息子で間に合わせるほかなかったわけでしょう。ぼくらはヴォルコシガンとして、なんとか間に合わせているんです」
彼の声がさらに低くなった。「だがぼくの長男は生きていきます。ぼくはしくじったりしない、ちゃんと育てあげますよ」
その氷のように冷ややかな言葉は、、略

アラールは思いなおす表情になった。「二度とふたたび、しくじったりしない」 ゆっくりと自分の言葉を訂正し、「父上、もはやチャンスは残されていないんです

ーーココマデ引用

わたしはチャンスが残されていない、という点に引っかかった。
なぜなら体細胞2つと人工子宮があれば、子供を作る事が可能な科学力が存在する、とコーデリアは言っていた。内乱が鎮圧された後であり、外宇宙の科学力を利用しようと思えばできる。
それに氷のように冷ややかな言葉という点も気になった。
原文を調べてみたら、やはり、小木曽さんの訳はオカシイ。

"If my brother had lived, he would have been perfect. ..略..  So ever after you've had to make do with the leftovers from that bloody banquet, the son Mad Yuri's death squad overlooked.  We Vorkosigans, we can make do." His voice fell still further. "But my firstborn will live. I will not fail him."

The icy statement was a near-lethal cut across the belly, 略

Aral's expression grew inward. "I will not fail him again," he corrected himself lowly. "A second chance you were never given, sir."

赤字の部分が過去形だという点と、again と second chance が呼応している点を小木曽さんは無視したようだが、ここは、

アラールは心の内に思いをめぐらせているようだった。「二度としくじるつもりはありません」 静かな声で言い直した。 「あなたには来なかった二度目のチャンスですよ、父上

兄の代わりを要求されても兄のようにはなれなかった、いつも兄の影を感じていた、、この自分そのものを受け容れてくれない父ピョートルに対する自嘲とも決別とも取れる言葉。
「わたしはどんな息子でも心から受け入れ大事に育てる」というアラールの宣誓ではないか。

小木曽さんの訳だとアラールとピョートルの父子の葛藤がぬるい感じだ。
ユーリ狂人皇帝が行った血塗られた晩餐会の残り物  the leftoversという部分も小木曽さんはただ、掃討隊の目を逃れて生き残った、というように訳しているが、掃討隊の目を逃れた「晩餐会の残飯」「余りモノ」というニュアンスがあると思う。
 
翻訳だと心の奥深くでくすぶっていたアラールの痛みや怒りが見えないのが残念だ。

いい年してバラヤー2010/01/13 00:00

ロイス・マクマスター・ビジョルドって面白い。
今頃知ったため、いい年して再びSF文庫本を買いだした。

一番最初に読んだSFは中学生のときのレンズマンだが
最期に読んだSFは何だったか。
10年?20年? SFから離れていた。

EEスミスのレンズマンや、アシモフのファウンデーション、ハーバートのデューン、 ムアコックのルーンの杖、 ブラッドベリやPKディック、ル=グイン、、スペースオペラから思索系まで、子供が生まれるくらいまでは夢中で読んでいた。

ニューロマンサーに大衝撃を受けて、エンダーのゲームにぞっとして、、そのあたりから次第にSFを離れてしまった。

当時の子供が今は結婚するというぐらいの歳月が過ぎ、

Robin McKinley のファンタジーを読んだ事がきっかけで ビジョルドを知り、戦士志願を読んだら、これが、とんでもなく面白い。
優れた作家は想像力で色々な世界を作る事ができる、というお手本のようだ。

ヴォルしか刀剣をもてないとはまるで日本の武士階級のようではないか、鎖国時代のせいでインフラは遅れている惑星、60あまりの領地にいるCountは苗字にヴォルをつけている(プロイセンのユンカーのようだ)特権階級。 国家形態は江戸幕府&明治政府に似ている。Countは藩主だが、そもそもは平安時代の国司ともいえる。 エンペラーを頂上に戴き、一般的な宗教はなく(一神教も多神教もなさそうだ)、男子は勇猛、女性はしとやか、という男尊女卑社会。 契約よりも言葉による「誓い」のほうが重きを成す。
開国(開星)による先端技術の吸収は軍事産業に傾きがち、世襲のヴォルの国主会議と、一般民の議会があるが、皇帝の一声でなんとでもなる。暗殺や粛清も日常茶飯事?!

対照的に、先端科学に支えられた高度情報社会のベータ星。
自然条件が非常に悪いため主に人工的建造物のなかで暮らす人々。
12歳になると全員が永久避妊具を埋め、遺伝子審査や養育能力などをパスしたカップルのみが妊娠を許可される。 妊娠すると女性側の選択で人工子宮も選べ、その場合は9ヶ月後に赤ん坊にご対面というわけだ。
合成たんぱく質の食事、あらゆるところに装備された監視カメラ、あらゆることに契約や法律がつきまとう、カリカチュアされているが、現代の先進諸国の延長上にある星。

都会育ちの理系キャリアウーマン(大柄)がタイムスリップで明治時代かプロシアの軍人貴族と恋におちたような話だが、どうしてこんなトコに来ちゃったの!やばすぎるじゃない! 安心して眠ることもできないほど妬みそねみ憎しみ権謀術策のうずまく世界。

スーパーウーマンらしくないスーパーウーマン。
知力と胆力と誠実さをふりしぼって、過酷な道を行軍する。
剛毅なダンナがメロメロだから気持ちいい。
ジェンダー問題を嫌味なくエンターテイメントにしている。

「戦士志願」の誤訳2010/01/08 23:01

ビジョルドの「戦士志願」の原書をたまたま手にいれたので、気になってた箇所を見てみたら、やはり誤訳だった。

「背景」
エレーナの出生の秘密が明らかになった。
エレーナの母にとってエレーナは忌まわしい過去の象徴。
娘の顔を見るだけで苦痛が蘇る。

一方のエレーナは、自分を憎んでいるように避ける母を渇望の目で見る。

マイルズはエレーナの母とふたりきりで会う。
演技でもいいからエレーナに温かい言葉をかけてやってほしい、自分の両親について聞いてきたことが嘘まみれだったと知り、何もかも汚されてしまったエレーナに何か残してやってほしい、そうマイルズは思ってる。

----ココカラ--翻訳文引用--

マイルズはエレーナの母に言う 「少なくとも、彼女が奪われたものの代わりになるものを、みつけてやらないとね。ほんの小さな慰めでも」

「あの子が失ったものは幻影にすぎませんよ」

「幻影、、、」彼は考え込んだ。「あなたも長いあいだ幻影で生きてきたとはいえませんか」と彼は示唆した。「こんなことがなかったら一生幻影を見続けていたかもしれない。ほんの2,3日、でなければ、2,3分でも、わずかなことをするのが、そんなにむずかしいことですか?」

---ココマデ-----

こんな変な会話、翻訳者さんも、訳していてヘンだと思わなかったのかなぁ。
You could live だから、「あなたは生きてきた」じゃなくて仮定法の「人は生きられる」って訳すべきだ。

"An illusion..." he mused. "You could live a long time on an illusion," he offered. "Maybe even a lifetime, if you're lucky.
Would it be so difficult, to do a few days-even a few minutes-of acting?

マイルズはエレーナの母に言う 「少なくとも、彼女が奪われたものの代わりになるものを、みつけてやらないとね。ほんの小さな慰めでも」

「あの子が失ったものは幻影にすぎませんよ」

「幻影、、、」と彼はつぶやいた。「人は幻影ひとつあれば長く生きられるものなんですよ」と彼は口にだしてみた。「たぶん、運がよければ一生でもね。ほんの2、3日、いやほんの2、3分でいいからフリをすることが、そんなにむずかしいことですか?」

acting を フリをする、って訳したのはわざとです。
「2,3分でも、わずかなことをする」と翻訳者さんが訳したけれど、acting をもうちょっと強調したみたかったからです。

結局、原文は、マイルズがエレーナの母に、「母親から愛される」幻影をエレーナに2,3分でもいいから見せてやってくれ、と頼んでいる素直な文章でしたね。
辛い経験をして20年近く悪夢と戦ってきたエレーナの母親にたいして「あなたも長いあいだ幻影で生きてきたとはいえませんか」 なんて言うほうがオカシイです。

Qing Dynasty 清朝 乾隆帝のあと2009/09/08 15:49

乾隆帝は1795年に退位したが実権は99年に死ぬまで離さなかった。
乾隆帝後期、清朝の綱紀は乱れ国家は弱体化した。

Qianlong Emperor 乾隆帝  奸臣Heshen

Jiaqing Emperor 嘉慶帝 (在位 1796-1820)
本名 Aixin-Jueluo Yǒngyǎn 愛新覺羅永琰,
November 13, 1760 生まれ
乾隆帝の寵愛を受けた漢民族出の令貴妃の息子(乾隆帝の第15子)
第1、第2皇子が夭逝したあと、1789年、乾隆帝が彼を第一皇子 Prince Jia (嘉親王)と指名した。

Yongxing
本名 愛新覚羅 永瑆. あいしんかくら えいせい.
1752~1823
乾隆帝の第11子
清朝史に、学問をよくし非常に優秀で、書や詩に秀でていたと記録されている。
国庫管理と軍隊の要職を任せられていたが、Yongxingの能力に脅威を感じた嘉慶帝によって、蟄居させられた。
テメレア本ではPrince Yongxing と呼ばれているが、正式にはPrince Cheng (成親王) という称号である。

なお中国で出版されているテメレアは、元々のフランス語の意味
「怖れ知らず」から、 ずばり 「無畏」 と呼ばれている。
戰龍無畏

Temeraire ドラゴンのリスト覚書2009/08/30 00:00

フランス
・フルール・ド・ニュイ 藍色の体 夜行性 大型戦闘竜
・グラン・シュヴァリエ 水色の腹 大騎士種 トリウムファリス
・プティ・シュヴァリエ 大型
・フラム・ド・グロール(栄光の炎) 火噴く
・ペシュール・クローネ(王冠を抱く釣り人) 中型
・ペシュール・レイネ(縞のある釣り人)
・プ・ド・シエル(空虱) 小型
・オヌール・ドール(黄金の栄光) 赤・青の縞 毒 小型

・シャンソン・ド・ゲール 半透明のぞうげ色の翼に橙と黄色と茶の縞 重量級 プレクルソリス

イギリス
・ウィンチェスター 紫と茶 ヴォリーより小さい レヴィタス
・グレーリング 小型 ヴォリー
・金色 翼端がオレンジ 目が緑色 ケレリタス
・パスカルズ・ブルー 神経質 小型 ニチドゥス
・グレー・コッパー 緑がかった地色 ドゥルシア
・青と黒の斑紋のある銀灰色
・アングルウィング
・イエロー・リーパー 中型 メッソリア、イモリタリス
・アングルウィング しなやかな羽ばたき 金色 オヴェルサリア
・パルナシアン かぎ爪が大きい 中型 ヴィクトリアトゥス
・ロングウィング オレンジ色の翼端、白と黒のさざなみ模様、くすんだブルーの地色。 毒 エクシディウム、モルティフェルス、リリー
・チェッカード・ネトル 大型
・リーガル・コッパー 鮮やかな模様 大型 レティフィカト マクシムス

中国
インペリアル 漆黒の体色 青、灰の楕円の斑紋 青い眼
セレスチャル Devine Wind

スペイン
・フレッチャ・デル・フエーゴ(炎の矢)  小型火噴き

その他
インカのコパカチ、 日本のカリュウ、ライデン、トルコの